科学技術政策分科会

 第10回〜第20回例会

第20回 科学技術政策分科会(キーパーソン・シリーズ第9回)

日  時  平成15年1月22日(水)18:30−20:30
場  所  日本総合研究所・東京本社 101A会議室(1階)

話題提供  佐野 太(さの ふとし)氏
 (文部科学省大臣官房政策評価室長,前・内閣府科学技術政策担当大臣秘書官)

テ ー マ  小泉政権の科学技術政策
      −総合科学技術会議の発足から科学技術予算のSABC評価まで

 2001年1月6日、中央省庁等の行政改革の目玉の一つとして、内閣府に「総合科学技術会議」が設立されるとともに、科学技術政策を専門に担当する「科学技術政策担当大臣」が誕生した。笹川大臣、尾身大臣の強力なリーダーシップにより、府省を総合した新たな科学技術政策の推進体制が如何に構築されていったかを述べるとともに、総合科学技術会議が打ち出した科学技術政策の概要について述べ、行革後2年間の科学技術政策の総括を行う。
(佐野太氏は、行政改革に際して科学技術関連行政機構の制度設計や評価制度の整備等について担当者として関与した後、笹川大臣および尾身大臣の秘書官を務め、現在は、文部科学省の政策評価を担当する政策評価室長の任にある。今回は、小泉政権下の科学技術政策の展開をつぶさに見てきた氏の体験について話をうかがい、我が国の科学技術政策の今後の方向性を議論する機会としたい。)


第19回 科学技術政策分科会(ウォッチャー・シリーズ第10回)

日  時  平成14年12月18日(水)18:30−20:30
場  所  日本総合研究所・東京本社 101A会議室(1階)

話題提供  丹羽 冨士雄 氏
      (政策研究大学院大学教授)

テ ー マ   ドイツの最近の動向 − 開かれた政策形成の実施:FUTUR

 ドイツの科学技術システムは、伝統的に「信頼に基づく自律性の重視」が理念的特色であり、政策形成には科学界の関係者のコンセンサスが重視されるなど、戦略的な政策展開を指向していなかった。しかし、シュレーダー政権になってから科学技術・イノベーション政策の新たな形成体制(イノベーション会議)が模索され、2001年から抜本的に改革された新システム FUTUR(フトゥア)が実施された。これは、科学技術の専門家だけでなく広く社会各セクターから募集したドイツの将来像(社会経済ニーズ)に基づき、デルファイ型の技術予測を利用しつつも、社会に開かれた「コミュニケーション・プロセス」として設計されている。また、関係機関の戦略策定のための重要なツールとして位置づけられている点でも興味深い。
 今回は、最近のドイツの動向に関して、現地でのインタビューを含む調査を実施している丹羽冨士雄氏に話題提供していただく。ドイツの科学技術政策に興味を持つ方だけでなく、科学技術・イノベーション政策の形成・策定の新しい方法論に興味を持つ方にもお勧めしたい。


第18回 科学技術政策分科会(ウォッチャー・シリーズ第9回)

日  時  平成14年8月19日(月)18:30−20:30
場  所  日本総合研究所・東京本社 101A会議室(1階)

話題提供  深作 裕喜子 氏
      (経済協力開発機構科学技術産業局 科学技術政策課主任行政官)
      (OECD/DSTI/STP, Principal Administrator)

テ ー マ   UKの公的科学研究システムにおける最近の改革

 UKは、1993 年に当時の保守党政権がホワイト・ペーパーを公表して以来、研究会議(Research Councils)システムを変革してきた。また、大学・高等教育機関(HEIs)の科学研究システムについても変化があった。さらに、各省庁の公的セクター研究機関(PSREs)についても、この間、エイジェンシー化されたり、民営化されたりという動きがあった。UKにおいて実施した多くのインタビューを踏まえつつ、これらの変革によるインパクトや変化の方向についてその概略を述べる。
  HEIs: higher education institutions
   PSREs: public sector research establishments


第17回 科学技術政策分科会(ウォッチャー・シリーズ第8回)

日  時  平成14年5月15日(水)18:30−21:00
場  所  日本総合研究所・東京本社 101A会議室(1階)

話題提供  清貞 智会 氏(文部科学省科学技術政策研究所)
      平澤  冷  (政策研究大学院大学)

テ ー マ   予算配分からみたブッシュ政権の科学技術政策の特徴(仮題)[清貞]
      米国の科学技術政策の行方 ─選挙公約はどうなったか─   [平澤]

 大統領選挙期間中に開催した前回の米国ウォッチャーからの報告に続き、今回は、2002年度予算の策定・施行状況と2003年度予算の審議状況とを踏まえ、(1)ブッシュ大統領の予算教書と、議会での修正内容、(2)選挙公約等の実施状況(教育とNIHへの重点投資、ATPの見直し、OTAの復活、GPRAの査定過程での利用等)、(3)9.11以降の激変等についてご報告する予定です。


第16回 科学技術政策分科会(キーパーソン・シリーズ第8回)

日  時  平成14年4月24日(水)18:30−21:00
場  所  日本総合研究所・東京本社 101A会議室(1階)

話題提供  能見 利彦 氏(経済産業省産業技術環境局技術調査室長)

テ ー マ   我が国のイノベーションシステムの特徴と課題
      ─ 研究開発の主要指標と調査データ ─

 我が国においては、産業界を中心とする研究開発活動が活発であり、特許も数多く取得されているが、その成果は、新しい産業の創出や生産性の向上など経済の活性化には結びついていない。これは、戦略性など産業界自体の研究開発マネジメント及び産学連携など我が国全体のイノベーションシステムに問題があるためではないか。このような産業界及び我が国のイノベーションシステムについて、統計データのみならず、アンケートなど各種の調査をも活用し、国際比較しながら、その特徴と問題点、今後の課題を考える。


第15回 科学技術政策分科会(キーパーソン・シリーズ第7回)

日  時  平成14年2月26日(火)18:30−21:00
場  所  日本総合研究所・東京本社 101A会議室(1階)

話題提供  興 直孝 氏(科学技術振興事業団専務理事/前・内閣府政策統括官)

テ ー マ   総合科学技術会議および内閣府の創設の経緯

 総合科学技術会議および内閣府の科学技術政策関連部局が創設されて1年余が過ぎた。我が国の科学技術政策を決定づける機関として、その重要性は改めて述べるまでもないが、誕生から1年を過ぎ、一連の科学技術行政システム改革の行方がようやく見えてきた現在、それらの動向はますます注視すべきものとなっている。
 興直孝氏は、内閣府の創設と同時に科学技術政策担当の初代政策統括官に就任し、新しい科学技術政策関連機構の最初の舵取り役という重責を果たした。また、それに先立ち、科学技術関連の行政機構の制度設計等に関しても当事者として関与された。今回は、総合科学技術会議誕生の経緯をつぶさに見てきた氏の体験と同会議の状況について話をうかがい、我が国の科学技術政策の今後の方向性を議論する機会としたい。


第14回 科学技術政策分科会(ウォッチャー・シリーズ第7回)

日  時  平成14年1月9日(水)18:30−20:30
場  所  航空会館 504号室

話題提供  Lennart Stenberg 氏(在京スウェーデン大使館科学技術参事官)
      伊地知 寛博(文部科学省科学技術政策研究所主任研究官)

テ ー マ  

・スウェーデンの科学技術システムの概要と最近の科学技術・イノベーション政策の動向[伊地知]
・Transformation of the Swedish Innovation System in the area of Life Sciences and Bioindustry in response to the challenges of globalization and“Big Biology”
(グローバリゼーションと“ビッグ・バイオロジー”という難題に応えるライフ・サイエンスとバイオインダストリー領域におけるスウェーデンのイノベーション・システムの変容)[Stenberg]

 スウェーデンは、OECD諸国の中で国全体としてもっとも積極的に研究開発投資を行っており(研究開発費対GDP比約3.8%、1999年)、しかもその約75%(1999年)が民間企業セクターによって支出されている。また、産業によっては、通信・機械・医薬品などでは世界的な有数の大企業が本拠を置いていることもあり、総人口が約888万人(2000年末現在)で比較的小国であるにもかかわらず、我が国においても一般に関心が高い。
 最近の状況に目を転じてみると、1990年代前半に経済的苦境を経験しそれを克服してのちも、グローバリゼーションの進展や産業構造の変化に伴い、いかに国として魅力ある所にしていくかということに努力が払われている。とくに小国であるがゆえになおさら、本拠を置く多国籍企業など大企業から受ける影響が大きく、これらの企業が引き続きスウェーデンにおいてイノベーションを生み出していく環境を構築していくことがますます重要となっている。
 そのために、政府は、イノベーション・システムの観点を踏まえながら種々の政策を形成し展開してきている。新たな領域における研究の推進やそれを担う人材の育成ならびにイノベーションを促進するために、新たなプログラムの実施や、関係する機関の新設・組織再編などを行ってきている。
 本発表では、スウェーデンの科学技術システムの概要や最近の政策の動向を紹介するとともに、とくに、世界的に焦点が当てられ、スウェーデンにおいても積極的に取り組まれているライフ・サイエンスおよびバイオインダストリーの領域を具体的に見ながら、そのイノベーション・システムの変容について理解を深めることとしたい。


第13回 科学技術政策分科会(キーパーソン・シリーズ第6回)
日  時  平成13年12月17日(火)18:30−21:00

場  所  日本総合研究所・東京本社 101A会議室(1階)

話題提供  坂田 東一 氏(文部科学省 研究振興局審議官)

テ ー マ  文部科学省の新しい政策展開

 平成13年1月6日、中央省庁等改革に伴い、文部省と科学技術庁が統合され、新たに文部科学省(Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology: MEXT)が発足した。本学会では、ここ数年来、総合科学技術会議や第II期科学技術基本計画についての議論や分析が盛んであったが、政府の科学技術関係経費の6割以上を所掌する文部科学省は、我が国の科学技術行政の中核的組織であり、その理解を深める必要がある。特に、高等教育政策と研究開発関連政策との整合性の欠如といった従来からの課題が統合によってどのように変化しているのか等、注目すべき点は多い。
 坂田東一氏は、かつて、科学技術庁官房総務課長として両省庁統合後の科学技術政策関連機構の設計作業(デザイン)に関与し、また、現在は、旧文部省と旧科学技術庁に由来するポストがほぼ半数ずつで構成され、“両省庁統合の実験場”とも呼ばれる研究振興局の審議官として活躍されている。このような経験を踏まえて文部科学省の状況について報告していただき、我が国の科学技術政策の今後の方向性を議論する機会としたい。


第12回 科学技術政策分科会(ウォッチャー・シリーズ第6回)

日  時  平成13年11月20日(火)18:30−20:30
場  所  航空会館 504号室

話題提供  松尾 泰樹 氏(文部科学省科学技術・学術政策局政策課課長補佐)
            (前駐華日本国大使館一等書記官)

テ ー マ  中国の科学技術政策について

 中国の科学技術政策は、国防を中心とする重ハイテク(航空・宇宙、原子力)から出発し、現在、重ハイテクに片足を置きながら、経済に如何に裨益させるかを重視した政策、いわゆる軽ハイテク(IT、バイオ、ナノ・材料)に軸足を移してきていると言える。
 1978年の改革開放政策以降、中国は驚異的な発展を遂げたが、社会主義市場経済という体制面での矛盾が顕在化してきている。近年、中国は、経済が減速する中、WTO加盟も控え、景気回復の切り札として、企業を中心とした科学技術体制の改革を推進している。同政策は本年定められた第十次5ケ年計画(2001−2005年)の柱にも据えられているが、その成否のポイントは、国が如何に民間企業が自由に経営出来る環境
を整備できるか、例えば企業に対する国の関与を如何に減じることが出来るかに係っていると言える。


第11回 科学技術政策分科会(キーパーソン・シリーズ第5回)

日  時  平成13年4月13日(金)18:30−21:00
場  所  文部科学省 科学技術政策研究所 3階会議室

話題提供  喜多見淳一 氏(経済産業省産業技術環境局産業技術総合研究所チーム長)
      古賀 洋一 氏(経済産業省産業技術総合研究所研究協力室長)

テ ー マ  産業技術総合研究所の発足とその研究所マネージメントの考え方等について

 平成13年4月1日、従来の工業技術院傘下の15研究所及び計量研究所の合計16機関が単一の研究所に統合化され、新たに独立行政法人「産業技術総合研究所」が発足する。産業技術総合研究所は、独立行政法人としての予算上、定員管理上のメリットを活かすとともに、統合化されることに伴う研究管理・研究支援部門の拡充強化を行うこととしている。さらには、異分野間の融合的な研究が効率的に実施できるような研究体制を組織するとともに、研究ユニット長への権限の委譲による意思決定の迅速化等を行うこととしており、これらにより産業競争力の強化や知的基盤の整備を図ることとしている。
 産業技術総合研究所の発足に当たっては、その設計について多くの有識者から助言を授かるとともに、経済産業省の独立行政法人評価委員会では、法人の中期目標やその実行のための計画、法人の業績に係る評価の基準等についても議論を頂いた。
 本分科会においては、新たに発足する産業技術総合研究所の概要及びその研究所マネージメントの考え方について、これに対する有識者からの意見等も含めて紹介し、今後の産業技術総合研究所の運営等についてのご高察を聞く機会としたい。


第10回 科学技術政策分科会(ウォッチャー・シリーズ第5回)

日  時    平成13年3月8日(木)18:30−21:00
場  所   文部科学省 科学技術政策研究所 3階会議室

話題提供   斎 藤 尚 樹 氏 (文部科学省科学技術政策研究所 企画課長、
                元 在キャンベラ日本大使館 一等書記官)
       平 澤   冷 (政策研究大学院大学 教授)

テ ー マ   オーストラリアの最近の動向

 ルイ・ブランスコム名誉教授(ハーバード大学)によればオーストラリアは科学技術の公共政策が最も整備されている国であるという。オーストラリアの政策担当者はこの事を誇りに思うと同時に投資の少なさを嘆く。我が国とはこの点でもオーストラリアの在り方は相補的であると言えます。
 今回は、オーストラリアについて初めてでもあるので、オーストラリアの政治システムや国情の紹介をまず行い、その後で最近10年あまり展開されてきたイノベーション政策の概要とCRC
(Cooperative Research Center)について紹介します。この両者は我が国の研究技術政策を考える際特に参考にすべき点と思われます。1月24日に首相によって発表されたイノベーション政策のアクションプランの内容はまだウェブサイトで見ることはできませんが、その内容もさることながら、そこに至るまでの開かれた検討プロセスの在り方は注目すべき点です。教育システムと研究システムを融合させたCRCは世界で最も成功している大学と産業の連携制度といえます。