第17回シンポジウム
デスバレー(死の谷)を越えて ─科学技術から社会経済的価値を生み出す体制─ |
開催日 平成14年6月7日(金) 場 所 笹川記念会館(4階 第1,第2会議室)
開催主旨
本シンポジウムでは、「科学技術から社会経済的価値の創出」における「断絶(デスバレー)」をどう克服すべきかを主題としています。内閣府等の主催により「第1回産学官連携推進会議」が6月15, 16日に予定されていますが、本シンポジウムはそれに先立ち、わが国に課せられているこの本質的課題を深く認識し、それへの対応策について「科学技術の経営と政策」を専門とする研究者集団の立場から議論を深めることを目的としています。
21世紀の強い日本をつくるためには科学技術のポテンシャルを上げると同時にそれを社会経済的価値に変換するための仕組みが必要とされます。また、この仕組みをうまく機能させるためには、そもそもわが国にとっての喫緊の課題が何であるかを深く認識し、妥当な戦略を立てるための戦略装置が不可欠です。しかし、残念ながら今日の日本の研究開発をみますと、妥当な戦略の欠如のみならず、そこには構造的に、社会経済的価値にたどり着く前に落ち込む多くの深い谷(デスバレー)が存在しています。
公的研究機関や大学の競争力の向上や活性化という立場から見れば、サイエンスとしての研究者(ニュートニアン)による科学技術のポテンシャルアップという命題がある一方、「知的なデスバレー」を越えて対岸で価値創造をもたらすような知識の創出を念頭においた研究開発者(ジェファソニアン)の量と質をいかに確保するかが大きな課題となっています。
地域活性化という立場からは、新しい産業の芽としてのベンチャーをスタートアップさせ、それを第二、第三のホンダやソニーに成長させていく環境整備が課題です。ジェファソニアンをいかにして地域に根付かせ、その社会経済的取り組みを成長させ続けることができるかなど、そこには越えなければならない多くの深い「制度的なデスバレー」があります。
中堅・大企業では、グローバルレベルでの競争優位性を確保するために、事業戦略と連動した研究開発が進められるべきです。スピード、規模、差別化等、開発の特性に合わせた外部とのアライアンスや、統合的内部構造をもった組織等が必要とされていますが、そこには「組織的なデスバレー」を渡るための多くの仕掛けやシステムを補完しなければなりません。
そして、大学、研究機関、企業というプレーヤーが地域や国のレベルで、他のセクターと共に相互にインセンティブ・チェインによって結合された、日本としてのナショナル・イノベーション・システム(NIS)の構築や整備も更に大きな課題として横たわっています。
研究開発におけるわが国の潮流を踏まえて、本シンポジウムにおいてそれぞれのお立場から、デスバレーとそれを克服するためのブリッジングとは何かについて、議論に参加されご提案頂ければ幸いです。
プログラム
総合司会 水島 温夫(シンポジウム実行委員長)
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午前の部 | ||||
9:30
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〈開会の挨拶とシンポジウムへの論点整理〉 | |||
「ノンリニアなNIS、機能領域の設定、ジェファソニアンの復権─マクロな構造と議論の枠組み」 | ||||
平澤 冷 | 政策研究大学院大学教授 | |||
基 調 講 演 | ||||
9:50
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「第1回産学官連携推進会議に向けて─科学技術を軸とした日本経済の構造改革─」 | |||
林 和弘 | 内閣府政策統括官付参事官 | |||
10:35
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「異業種連合で豊かなビジネス生態系を育てよ─日本型インキュベーションのビジョンと戦略」 | |||
田坂 広志 | 多摩大学・大学院教授,シンクタンク・ソフィアバンク代表 | |||
事 例 報 告 | ||||
11:20
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「ビジネスモデルと研究開発モデルの連動─『顧客から見た価値の具体化能力』の視点から─」 | |||
水島 温夫 | 有限会社フィフティ・アワーズ代表取締役 | |||
11:50
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「ニュートニアンとジェファソニアンの谷間─理研の経験から─」 | |||
宮林 正恭 | 理化学研究所理事 | |||
12:20
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「産総研における研究開発成果の産業化に向けた取り組み」 | |||
鳥山 素弘 | 独立行政法人産業技術総合研究所企画本部総括企画主幹 | |||
12:50
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(昼食・休憩) | |||
午後の部 | ||||
13:30
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「デスバレー踏破の試み─私立大学の立場から」 | |||
中島 真人 | 慶応義塾先端科学技術研究センター所長 | |||
14:00
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「価値創造型ベンチャーの考察と実例」 | |||
八幡 恵介 | IAIジャパン(国際エンジェル連盟日本支部)会長 | |||
14:30
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「研究開発型ベンチャーへの投資不全症候群を克服する─「ジョンレノンのイマジン」をベンチャー投資に読む─ | |||
村口 和孝 | 日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合ベンチャーキャピタリスト | |||
15:00
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「行動のとき!─日欧マイクロシステム技術分野での先行事例─」 | |||
原山 優子 | 東北大学大学院工学研究科教授,経済産業研究所ファカルティフェロー | |||
15:30
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「産学をつなぐ技術インキュベーションと制度」 | |||
隅藏 康一 | 政策研究大学院大学助教授 | |||
パネルディスカッション | ||||
16:00
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「『連携政策』の深化のために」 | |||
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パネリスト | 講演者を中心として | ||
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司 会 | 平 澤 冷 | ||
18:00
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(終 了) |